守田敏也さん講演録 10 科学を取り戻す

お疲れさまですっ。いよいよ前半の最終回です!

《 市民放射能測定所にやっていってほしいこと その3。
〜 科学的知識を身につける場に 〜 》

【 放射能を測るとはどういうことなのかを知り、
科学を自らの手に取り戻す 】

三つ目に市民自らが科学をする場として、測定所を確立していって欲しいですね。その中で放射能を「見える化」していって欲しい。とくに、ぜひ、多くの方に、放射線測定では、「インチキ」がいくらでもできるのだということをしっかりと教えてあげてください。
僕が忘れられない経験なのですが、京都で保育園給食の安全性を守ろうということで、頑張っているお母さんたちと一緒になって、京都大学の技官だった方を訪ね、保育園の給食を測定してもらったことがありました。そうしたらその方がにやにやしながら「それでどうしたいの?出したいの、出したくないの?」っておっしゃるのですよ(笑)。「えっ、どういう意味ですか」と聞くと、要するに「測定の仕方によって放射能を検出することもできるし検出しないこともできるのだよ、測定というのはそもそもそういうもんなんだよ」とおっしゃる。

測定している方はご存知ですが、チェルノブイリ原発事故の影響や、大気中の核実験などを含めれば、地球上のどこでも徹底して測定を行えば、なにがしかの放射能が出てきてしまうのが現状なのです。だから徹底して測定して、「放射能が出た、危ない」と人に思わせたいならそのような測定ができるし、反対に「そんなに危なくない、安全だよ」と思わせたいのだったら、そういう測定もできるというのが、実際の測定の現実なわけです。

これは測定する時の時間をどれぐらいにするのか、検体の量をどれぐらいにするのか、検出限界をどれぐらいにするのかなどに左右されることです。また測定するときの温度や検体の水分の含有量の違いなどでも、数値は大きく変わってきます。他にも機械への自然界からの放射線の遮断をどれだけ行っているかなど、さまざまな要因が測定に影響します。
だから、測定に関するそういう知識をきちんと教えて、行政が安全だと言いたいがために行っている検出限界の高い測定だとか、あるいはすごく短い時間での測定、それこそホールボディーカウンターにちょっと座っただけで、「はい大丈夫です」とかいうものに、騙されないようになってもらうことが大切なのです。

その点で、放射線測定とは何かということを体験しながら、基礎的な科学的知識を身につける場として測定所を設定していくことが非常に大事だと思うのです。「数値が出ました」で終わらせずに、その数値はどのような条件下ででてきたものなのか、その場合、時間を延ばすとどうなるのかなどということを、ぜひわかりやすく教えてあげてください。
特に科学の深い知識のある方は、往々にしてその知識が市民の方への説明に邪魔になってしまうことがありますので、いかに科学の深い知識を、生活的な言葉に翻訳し、相手にわかりやすく伝えるかという点に心を砕いてみてください。そこは市民が科学と取り戻していくうえで、とても大事なポイントだと思います。
奥森さんなどは、きっと説明が上手だと思うのですが、科学の深い知識を持たれている方の中には、質問すればするだけ、より答えが分からなくなっていくという傾向がある方もあります(笑)。僕も最初、ずいぶん苦労しました。科学者で喜んで協力してくれる方は多いのですけれども、例えば「セシウム」とか言ってくれない。ぜんぶアルファベットで言う。あとは、何十万ベクレルとか言ってくれない。ぜんぶ10の何乗とか言う。13乗とか15乗とか、それが皮膚感覚のようになっているのですが、こっちはぜんぜんその感覚がわからないのですね。

だからかえって市民感覚を持っている人がそばにいて、どうすればより人に理解してもらえるかを一緒になって考えていくと良いと思うし、そういう会話の中で思わぬ発見をすることもあります。僕も矢ヶ崎さんとの対話の中で結構、大きなことを発見したのですが、そういうことを重ねながら、市民が科学的知識を身に付けて行こうとする過程そのものが、私たちが政府や御用学者から私たちの手に科学を取り戻していく過程になると思うのです。ぜひその実践的な場として測定所を育てて下さい。

以上三つ言いました。
ひとつは、もっと低線量被曝の危険性そのものをきっちりと出していく場に測定所が発展していくこと。
もう一つは、食べ物全体の安全性、健康全体を考える場に測定所が発展していくこと。
三つ目は、科学をみんなで取り戻し、放射線とは何かを学んでいく場として測定所が発展していくことです。

この三つのうちでウェイトとしては特に2番目を厚くするとより多くの拡がりができると思います。多くの方々が、今、感じている食べ物への不信感、何をこどもに食べさせたらいいのだろう、どうしたらわが子をアトピーの苦しみから救うことができるんだろう、そういうことで悩み、苦しんでいる方もたくさんいますから、この領域は間口がすごく広いのです。その中で、放射線の危険性のことをきちんと入れていけば、今はまだ対象にならないような方たちを仲間にしていくことが可能だし、僕はそこに新たな発展の道があるのではないかなと思うのです。
以上そんなことをみなさんに提案したいと思います。

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次回は講演の後半部分に移ります。
守田さんの
ベラルーシ・トルコ視察について
みなさんにお伝えしたいことが満載です!

↓ ↓講演終了後
測定所に移動しまして
質疑応答 をしていただきました。
これまた濃ゆかった!!

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