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川根眞也さん講演録〈第10回〉2016年5月埼玉県産ニンジンに汚染が出た原因は?

2016年5月、6月
埼玉県産ニンジンから 3.4 ベクレル/ kg

去年の 5 月 6 月に、埼玉県産ニンジンから 3.4 ベクレルの
放射性物質が検出されて、びっくりしました。

私はずっと放射能汚染のデータを見ていますが、
原発事故以降ニンジンに放射能汚染が出たのは久しぶりです。
2013年くらいからないんですね。
昨年、一番最後に出たのは埼玉県所沢市産のニンジンから
10 ベクレル/kgです。

この原因を考えたときに、
最初はホットパーティクル(高放射能微粒子)かと思いました。

『食品と暮らしの安全基金』※1
という NPO 法人の調査団が
ウクライナに健康被害の調査に入っています。
そのとき、放射能の専門家のラーザレフ博士の協力を得ています。
ウクライナの方で、ストロンチウム 90 の分析ができる専門家です。
そのときの彼のロシア語の講演を日本語に直すのに協力したので、
彼の講演録を読みました。
ホットパーティクルとは、
原発から出てくるチリで、真ん中がウランの粒子です。

PM2.5 って言いますが、
これは粒子のサイズが
2.5 マイクロメートル以下の粒子という意味です。
1 ミリの 1000 分の1がマイクロメートル。
そのくらい小さくなると、北京から奈良まで飛んで来ます。
じゃあ原発からウランは飛んでこないんですか?
放射能の専門家はよく言います。
ウランやプルトニウムやストロンチウムは
密度が大きいから飛んでこない。
嘘です。
PM2.5 のような小さいものは、
北京から 3000km 飛んで来ます。
風向き次第では奈良にも来ます。

NHK の『サイエンスゼロ』という番組で、
2014年の12月20日かな。
『謎の放射性粒子を追え』※2 を
放送しました。
セシウムの小さい粒子で、ちょうど 2.6 マイクロメートル。
気象研究所の足立光司さんが研究した、という内容です。
セシウムボールというのは、
セシウムがたくさん含まれた金属の球だと。
なかなかいい番組でした。
ところが肝心な、中心部分にウランがあることを、
その番組では言いませんでした。

東京理科大学の中井泉さんという方が、
同じセシウムボールを調べています。
エックス線蛍光分光分析法というやりかたがあって、
エックス線をかけて物質から出てくるガンマ線を分析すると、
何という元素でその粒子ができているかわかります。
中心はウランでした。
これも時間をかけると溶けて分解していきます。

去年ニンジンに放射能汚染が出た原因のひとつとして考えたのは、
原発事故から 5 年たって、
ホットパーティクルが分解し始めてセシウムが出てきたのかと。
これが仮説 1 です。

仮説2。
去年は福島第一原発のがれき撤去をやっていました。
壁のパネルを全部取って、1号機の使用済み核燃料プールにある
何百本もの燃料を取り出すために、がれきを撤去した。
その際のフォール・アウト
つまり放射性物質の降下、沈着のためではないか。

そして仮説3。
今年になって気がついたのですが、
福島第一原発2号機の格納容器を調査するために、
昨年1年かけて除染をしてたのではないか。

今年の 1 月 30 日から2号機の調査に入っています。
あの調査もめちゃくちゃです。
なんのために格納容器があるか。
高さが5階建てビルほどの、16m のだるま型の格納容器。
格納容器の中に圧力容器があって、
ここでウランの燃料が燃えていた、
つまり核分裂をしていました。
圧力容器から放射能は出てはいけない。
原発は、出さないという約束なんだから。
だけどちょっと漏れてしまう。
それを閉じ込めておくのが格納容器です。
なのに格納容器に穴を開けたんですよ。
穴を開けて、鉄の棒を突っ込んで、ロボットを入れて調査をした。
放射性物質が外に出ないわけがない。
その前は、2号機も1号機も内部の放射線量が高すぎて、
作業ができなかったんです。
ではどうしたか。
風の強い日に扉の両側を開けて、風に吹き流させる。
2016 年に何度も建屋内除染をやっていたのではないかと
思っています。

これは私の推測だけではなくて、
2012年に『市民科学者国際会議』が行われたとき、
南相馬市の理髪師さんが言っていました。
「みなさん。建屋の中で作業ができないくらい
放射線量が高くなったらどうするか知っていますか。
山側の扉と海側の扉を開けて、風で流すんですよ」。
私は線量計を持ち歩いていますが、
埼玉県では変に線量が上がるときがあるんですよ。
今は 0.11 マイクロシーベルト/時くらいですが、
0.2 を超えるときがあります。
年に何回かあります。
この結果、どこかに放射能汚染地帯を作っていると思います。

2013年に南相馬市のお米に
100 ベクレルを超えた汚染が出ました。
それが10月に報道されました。
その直前には福島県が安全宣言を出していました。
2013年のお米には、
ひとつも 100 ベクレル/ kg を超えるものは
ありませんでした、と。
福島のお米は安全ですと言ってしまった。
そしたら南相馬市のお米から120 ベクレル/ kg 出た。
このときは読売新聞、毎日新聞、東京新聞も報道しました。
そしたら1週間後には今度は 150 ベクレル/ kg 出た。
このときは報道したのは福島民報、福島民友だけでした。
さらに 2013 年 12 月。今度は 180 ベクレル/ kg 出た。
今度は福島民報、福島民友も報道しなかったんです。
インターネット上のニュースでもなし。
ファイナンシャル・グリーン・ウォッチ(FGW)という
ニュースサイトだけが報じたのを
私はたまたまツィッターで見つけました。

なぜ福島民報、福島民友が南相馬市の旧太田村のお米の汚染を
報道しなかったのか。
その日が福島県産あんぽ柿の解禁日だったんです。
福島県知事が東京まで来て、
福島県産のあんぽ柿おいしいですよ、
放射能も検出されていません、
と言った日だったからです。

2013年。その年に何があったか。
8月19日、
福島第一原発の作業員の頭から放射性物質が検出されて、
アラームが鳴ってしまった。
その人は何をやっていたか。
3号機の屋上に上がって、がれきの撤去をしていたんです。
放射性物質が舞い散って、
その一部が南相馬市の旧太田村に落ちたらしいんですね。
その証拠を農林水産省と福島県は押さえています。
イメージングプレートといって、
放射性物質を写真で見えるようにする方法があります。
稲穂をエックス線の乾板の上に2、3週間くらい放置します。
そうすると放射線が出てきてエックス線の乾板を感光させます。
黒い斑点になって、ここに放射性物質があるとわかります。
その前の年に中通り、おそらく福島市だと思いますが、
採れたお米がだいたい 150 ベクレル/ kg。
それはイメージングプレートに載せてみても
放射性物質がどこにあるかわからない。
黒いポチポチはない。
だけど汚染されている。
これは、経根摂取といって、
根から吸収された放射性物質が稲の実に入るから
150 ベクレル/ kg が薄く全体的にあるため
見えないのです。

ところが南相馬の放射能汚染が出たところのお米は、
穂に黒いポチポチがついている。
葉っぱにもついています。
どういうことかというと、上から降ってきたからです。
だからはっきりした黒い形になって現れていたのです。

つまり、2013 年産南相馬市産のお米の放射能汚染は、
3号機のがれき撤去の影響です。
同じように、
2号機の格納容器の除染のために
埼玉県所沢市に落ちてきたとしても
おかしくないと私は思います。
証拠はありません。
推測でしかない。
しかし我々の置かれているのは、そういう環境だということです。

※1
『放射線被害の真実』食品と暮らしの安全基金、
2013 年 12 月 21 日、700 円
『放射能被害の希望』小若順一、
2014 年 4 月 26 日、700 円
『人への影響と対策』
食品と暮らしの安全基金、2015 年 4 月 1 日、1000 円

※2 2014 年 12 月 21 日の放送、
NHK「サイエンス ZERO」シリーズ原発事故(13)
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp489.html

【参考】
「内部被ばくを考える市民研究会」サイト 資料の項より。
「セシウム・ボール」はホット・パーティクル(高放射能微粒子)NHK謎の放射性粒子を追え!
(2014年12月21日放映)が隠した真実
| 内部被ばくと健康被害 | 内部被ばくを考える市民研究会
http://www.radiationexposuresociety.com/archives/5412

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(第10回終わり)

ニンジンか。。
私たち 奈良・市民放射能測定所では
2016年5月、2017年1月と3月の三回
いずれも千葉県産のニンジンを測っています。
関東産の野菜となると気になりますので、
慎重な測定と検討がされましたが
汚染は ほぼ ないと言えるというような
結果となっています。

一方で、お米は
2012年産の 福島県産のお米(玄米)の
残念ながら汚染されてしまっているもの(確認用の参考品)を
私たちの測定所でも測らせていただいています。

ニンジン。お米。
そして動物たちに放射性物質は
吸収され、付着しました。

末尾に載せた
「内部被ばくを考える市民研究会」サイトには
イメージングプレートの画像例として
キビタキの幼鳥の被曝像がありました。
小鳥の死がい全体に黒いぽちぽちがついていて、
それが放射性物質だという。

ちなみにキビタキはこんな鳥です。

写真出典:「日本の野鳥」1989年、小学館

成鳥で全長13㎝しかない小さな鳥の
さらに小さな ひな鳥の亡きがらに
放射性物質がたくさんついているわけですね。
こんなことが許されますか。

放射性物質は
身近な野菜やお米にも
小鳥にも
私たち人間にも降り注いでいる。
守らなければ、
逃げなければ、と思うのに。

逆の現実がすすんでいるのですね。

次回
第11回は 福島への住民帰還について です。

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